7巻→ディオドロス『歴史叢書』8巻→11巻

1 エレア人は数の多い国民になって法に従って自らを治めたため、ラケダイモン人は彼らの増大する勢力を疑惑の目で眺め、彼らが平和の恩恵を享受して戦争の活動を経験することがないようにするため、共同体にとって固定した生き方を彼らに打ち立てるべく支援した。彼らはギリシア世界のほぼ全てで同意されているような仕方でエレア人に神〔ゼウス(N)。〕を祀らせた。その結果、エレア人はクセルクセスに対する戦争に参加せず、神に当然の栄誉のための責務のためにそのような仕事〔戦争〕から解放され、さらに同様の諸戦争でギリシア人が互いに戦った時には、全てのギリシア国家が神聖なものとこの地と都市の不可侵性を保つことに熱意を持っていたためにいかなる国もそのような煩わしさを彼らに課さなかった。しかし幾世代も後のエレア人は戦争に参加して自ら選んで戦争に突入し始めた。
 エレア人は残りのギリシア人全てが共に行っていた戦争に加わらなかった。事実、クセルクセスが大軍勢を連れてギリシア人に向けて進撃してきた時、同盟諸国は彼らに戦場での働きを免除し、指導者たちは彼らが神々に相応しい栄誉のための責務を引き受けるつもりならばより重要な責務に向かうように指示を出した。
2 彼女〔ウェスタの巫女となったレア・シルウィア〕は密かにであろうとも男を抱擁することを許されなかった。というのも誰であれ生涯の幸福を刹那的な快楽と交換するほど愚かではない(とアエムリウスは考えた)。
3 ヌミトルはアムリウスという名の弟に王位を奪われ、アムリウスはアルバ人の王になったが、彼の望みとは裏腹にヌミトルがレムスとロムルスという自分の孫を認知すると、ヌミトルはこの同じ兄弟〔アムリウス〕を亡き者とするために計略を企んだ。その計略が実行に移され、羊飼いたちを呼んだ彼ら〔レムスとロムルスの兄弟〕は宮殿に向けて進み、玄関の内側へ向けて押し通って刃向かう者を皆殺しにし、その後アムリウスもまたそのようにされた。
4 その子供たち、すなわち子供時代を体験したロムルスとレムスが成人に到達すると、身体の美しさと力において残りの全ての人を上回るようになった。したがって彼らは全ての群れの保護を担い、強奪を働く者を易々と追い払って襲撃に来た多くの者を殺し、ある者は生け捕りにした。この仕事に示した熱意に加えて彼らはその地方の全ての羊飼いと親しくし、集会に加わって彼らの助けを必要とする人たちにその穏やかで社交的な人柄を示した。かくして全ての人の安全がレムスとロムルスにかかるようになると、人々の過半数は彼らに服従して彼らの指示を実行し、彼らが命ずる場所ならどこであれ参集した。
5 レムスとロムルスが都市の建設の予示を占うために鳥が飛んでいく様を見ていると、伝えられるところでは(ロムルスに)吉兆が現れたらしく、驚いたレムスは兄に言った。「この都市では、見当違いの忠告が運命の好転につながることが何度もあったのさ」事実、ロムルスは伝令を送ろうとあまりにも急いでいたし、彼自身はというとまったく間違っていたものの、彼の不心得は一つの偶然によって正しいものになった〔ディオドロスのこの出来事の説明はハリカルナッソスのディオニュシオスの説明(1巻86章)に倣ったものである。曰く、ロムルスは「熱望と嫉妬から」レムスに自分がすでに鳥が示す吉兆を得たという嘘を伝えようとし、伝令がレムスのもとにたどり着く前にレムスは六羽のハゲワシが右の方を飛んでいるという吉兆を見た。レムスがロムルスのもとに急行してどんな種類の鳥を見たのかと尋ねると、ロムルスが答えをためらっていた間に突如として一二羽のハゲワシが現れたため、レムスがまさにこれらの鳥を見ることができた時にどんな問いを問えるというのかとレムスに尋ねたという(N)。〕。
6 ローマ建設に関連してロムルスは近隣の人たちが彼の計画を邪魔しようとするのを防ぐべくその周りに急いで掘りを掘った。そしてレムスは重要な土地獲得の失敗に腹を立てて兄弟の好運を嫉妬したため、作業員たちのもとへ来て彼らの仕事をけなした。敵はそんな堀など難なく突破できるだろうから、掘は狭すぎて都市は簡単に落ちるだろうと彼は言い放った。しかしロムルスは怒りながらこう答えた。「私は堀を乗り越えようとする者には報復を行うべしと全ての市民に命じることにしよう」レムスは再び作業員たちを嘲弄し、堀をあまりにも狭くしていると言った。「なんとまあ敵は易々と堀を突破できることだろうか。見てみろ、俺だって簡単にできるぞ」そして言葉通り彼は堀を飛び越えた。作業員の一人のケレルなる者が彼に答えた。「王様の命令通り俺は堀を飛び越える者に仕返しすることにしよう」そして言葉通り鋤を振り上げてレムスの頭を打ち、彼を殺した。
7 大金持ちで高名な祖先を持っていたメッセニア人ポリュカレスはスパルタ人エウアイフノスとより広い土地を分かち合うことを合意した。家畜の群れの監視と保護を引き継ぐと、エウアイフノスはポリュカレスを騙してつけいろうとしたが、見破られてしまった。その方法はこのようなものだった。彼が何頭かの牛と牛飼いたちを商人らに売り、これらがその地方から連れて行かれたことを了解すると、彼は強盗が無理矢理襲ったせいでそうなったと言い張った。商人たちは船でシケリア島へと渡ろうとしてペロポネソス半島をぐるりと回っていた。嵐が起こると彼らは陸の近くに碇を下ろしたが、ここで牛飼いはそこならば土地勘があるから安心だと感じ、夜に小舟でこっそり抜け出して逃げた。それからメッセネへと向かって主人に事実の一切合切を暴露した。ポリュカレスは奴隷を隠し、それから共同運営者〔エウアイフノス〕にスパルタから自分のもとに来るように頼んだ。牛飼いたちが強盗に連れ去られて残りの者は殺されてしまったという話をエウアイプノスが言い張ると、ポリュカレスはその男たちを招き入れた。その男たちを見ると、エウアイフノスは驚き、彼の反論が明白なものであったために牛を返還すると約束したわけであるが、彼には最早言い逃れの言葉も残っていなかった。ポリュカレスは親切という義務を重んじてこのスパルタ人がしたことを言わず、支払われるべきものを受け取らせるために自分の息子を彼に付き添わせた。しかしエウアイフノスは自分がした約束を忘れ、あまつさえ自分に付き添ってスパルタに来たこの若者を殺害した。この無法な行いに激怒したポリュカレスはこの犯罪者の身柄を要求した。しかしラケダイモン人が彼の要求に聞く耳を持たず、エウアイフノスの息子を返答のためにメッセネへと送った結果、ポリュカレスはスパルタにやって来て監督官たちと王たちを前に自分が被った悪事を陳述した。しかしポリュカレスは好き勝手に戻る機会を得ると、その若者を殺して報復としてその都市〔スパルタ。〕を略奪した。
8 犬たちが吠えてメッセニア人が落胆していたところ〔第一次メッセニア戦争中、戦況の悪化を受けてメッセニア人がイトメ山に撤退した時のこと。〕、長老の一人が進み出て、予言者らのぞんざいな所見など無視するよう人々に訴えた。というのも彼が言うには、未来を予言する力がないおかげで彼らは私的な事柄でさえ多くの過ちを犯すものであり、今回の場合の問題は神のみが予測でき知ることができる事柄に関するものであり、彼らも所詮ただの人である以上はそういったことを理解することなどできない。したがって彼は人々にデルフォイへと使者を送るよう訴えた。ピュティアの巫女は以下のような返答を彼らに与えた。彼らは誰であれアイピュトス〔メッセニア王クレスフォンテスの息子で、父の死後王位を奪ったポリュポンテスを殺し、王位に就いた。〕一族の家系から一人の乙女を犠牲に捧げねばならず、もしくじが当たった者を神々に捧げることはできなければ、彼らは同じ一族の出の父が自発的に提供を申し出た乙女を犠牲に捧げなければならない。神託は続けて言った。「もしお前がこれを為せば、戦での勝利と力を得るだろう」……〔欠落〕。心の目でその殺害を思い浮かべる時には我が血を受け継いだ子への愛情が各々の人の心に忍び込んだため、どんなに大きな栄誉でも両親の目には我が子の命と同じ重さを持つことはなく、同時に彼〔我が娘を生け贄に捧げたアリストデモス王〕は自分がまるで裏切りを働いたかのように我が子に確実な死を与えてしまったことへの恐れでいっぱいになった。
9 彼〔次章に出てくるアルキアスかもしれない(N)。〕は自らの名誉に相応しからぬ過ちへと真っ逆さまに突っ込んでいった。というのも愛の力は若者を、とりわけ身体の強さを自慢するような若者を絡め取る力があるからだ。これが古の神話の著者たちがヘラクレスを他の誰にも負けないが愛の力で征服された人物として表現した理由である。
10 コリントス人アルキアスはアクタイオンへの愛に捕らえられ、何よりもまずその若者に使者を送って信じられないような約束をした。彼が父の誉れへの節度とその若者自身の節度に反する行動をさせるよう説き伏せることができないと、彼は好意にも懇願にも屈しない若者に力を使って無理強いしようとしてより多くの仲間を集めた。そしてついに、アルキアスは集めた男たちの一団に酒を飲ませ、彼の情動は彼をメリッソスの家に押し入ってその少年を力尽くで連れ去り始めるほどの狂気へと駆り立てた。しかし父と他の家人たちはアクタイオンをしっかり掴み、両集団の間で起こった暴力尽くの争いの中で知らず知らずのうちに少年は守る人たちの腕の中で息を引き取ったのが発見された。したがってその出来事の奇妙な展開を顧みるならば、我々はこの犠牲者の運命を憐れんで運命の予期せぬ変転に思いをめぐらさざるを得なくなる。というのもその少年は彼の名前通りの同じ死に方をし〔ギリシア神話に登場する同名の人物は自分の猟犬たちに食い殺されて死んだ。〕、それも彼らはいずれも自分を最も助けてくれた者の手の中で同じようにして命を落としたからだ。




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