アッピアノス(著) 『重訳版 内乱史』第1巻 ――グラックス兄弟の改革からスパルタクスの乱まで―― サイズ:B6/78頁 配布価格:900円 配布手段:コミックマーケット99にて配布※ ※BOOTHでも配布中 | |
ローマ帝政期の歴史家アッピアノスが著した『ローマ史』の中の、紀元前133年のグラックス兄弟の改革からアウグストゥスによる紀元前27年の帝政樹立までのいわゆる「内乱の1世紀」の出来事を記録した『内乱史』の英訳(ホレイス・ホワイト訳)からの重訳です。今回訳出した第1巻はグラックス兄弟の改革からスパルタクスの乱の平定(紀元前71年)までの約60年の出来事の記録です。本邦初訳。 さて、本巻ではグラックス兄弟と彼らの遺志を継いだ改革者たちの改革、ローマ史の本ではその原因や背景、結果や影響について必ずといっていいほど触れられる割に戦争の経過そのものの日本語で読めるまとまった記述があまりない同盟市戦争、「マリウス対スッラの内戦」と呼ばれるもののスッラのイタリア上陸前に世を去ったマリウスに代わり小マリウスといわゆる「平民派」政治家たちがスッラと演じた死闘、昨今ではFateシリーズにおいて圧制者絶対殺すマンとしてお馴染みの反逆者スパルタクスの反乱など、言わずと知れた、そしてあまり馴染みのない様々な歴史が語られております。次から次へと新たな戦いがよりスケールアップし、エスカレートした形で繰り返され落ち着く暇もないジェットコースターのような展開、見所だらけ、というよりは最初から最後までクライマックスと言っても過言ではない巻です。 また、中間層の没落と復活(グラックス兄弟の改革)、一票の格差問題(トリブス分配問題)、社会的な分断と矛盾の激化(土地分配問題をめぐる対立、派閥間の対立)など、今日の社会的・政治的諸問題に通じる諸問題も出現しており、歴史を通して現代の諸問題を考えるヒントを与えてくれるかも知れません。 とはいえ邦訳者は真面目な問題意識からというよりは楽しそうだからと面白半分で訳したわけですが、ともあれローマ史に興味がある方もローマ史に限らず歴史好きの方も興味深く読める本になっております。 試し読みはこちら(pdfファイル)(アッピアノス自身が『内乱史』全体のアウトラインを述べる序論)。 ・目次 はじめに 『内乱史』第1巻 序論 第1章 ローマの公有地/リキニウス法/ティベリウス・グラックスの農地法/この法律制定時の騒動/グラックスの著名な大演説/護民官オクタウィウスが法案に拒否権を発動し、グラックスが彼を辞職させる/法案の通過 第2章 護民官の新選/カピトリウム丘の暴動/グラックスの死 第3章 グラックス法の下での訴訟/スキピオ・アエミリアヌスが訴訟解決に取り組む/スキピオの変死/ガイウス・グラックスが護民官に立候補する/グラックスが騎士に司法権を渡す/イタリアの同盟者のローマ市民権要求/フルウィウス・フラックスと共にアフリカに渡る/グラックスが帰国後にローマで暴動を起こす/グラックスとフラックスの死 第4章 農地法の不履行/ノニウス殺害/ガリアの土地の分割/サトゥルニヌスの騒擾/メテッルス追放/メンミウス殺害/サトゥルニヌスへの処罰/恐怖支配 第5章 同盟市戦争の起源/リウィウス・ドルーススの法案/ドルースス殺害/引き続く騒擾/イタリア人の反乱/同盟市戦争/両陣営の指導者たち/諸々の戦い/執政官ルティリウスの戦死 第6章 クイントゥス・カエピオの敗北と死/セクストゥス・カエサルの敗北/スッラがマルシ軍を破る/ユダキリウスの死/エトルリア人とウンブリア人が市民権を受け取る/スッラの勝利/アプリアでの戦闘/同盟市戦争の終結/金貸しに対する蜂起と法務官の殺害 第7章 マリウスとスッラの内戦/対ミトリダテスの指揮権/スッラの都への進軍/都の占領とマリウス派の逃亡/スッラが導入した諸変革/戒厳令下のローマ/マリウスのきわどい逃亡/マリウスのアフリカ渡航/クイントゥス・ポンペイウス殺害 第8章 キンナの反乱の試み/キンナが都から追い出される/挙兵と帰還/マリウスの帰還/彼らがローマを包囲し、食糧供給を絶つ/都の降伏/市民の虐殺/公共広場での晒し首と雄弁家マルクス・アントニウスの死/スッラの友人たちの殺害と彼らの財産没収/メルラとカトゥルスの死/マリウスの死 第9章 スッラがミトリダテス戦争を終わらせたこと/ローマへの帰還準備/キンナの死/スッラとの交渉/イタリアでのスッラ/都での恐怖政治/スッラに対立する軍の組織/兆と不思議な出来事/カヌシウムでの戦い 第10章 スッラへの寝返り/セルトリウスがヒスパニアに向かう/スッラの将軍たちの成功/スッラの勝利/ローマでの殺人/若マリウスがプラエネステで包囲される/スッラへのさらなる寝返り/執政官カルボのアフリカへの逃亡/スッラの市門での勝利/プラエネステ降伏と若マリウスの自害 第11章 スッラによる公権剥奪及び殺戮/諸地域での財産没収と殺害/意気揚々のスッラ/終身独裁官就任/スッラの法令/スッラの命によるルクレティウス・オフェッラの殺害/イタリアの困窮と疲弊 第12章 スッラの権力放棄/スッラの性格/スッラの死と葬儀 第13章 ローマでの新たな対立/セルトリウスとの戦争/ポンペイウスがセルトリウスに差し向けられる/セルトリウスがポンペイウスを破る/他の場所での戦争/セルトリウスがパッランティアでポンペイウスを敗走させる/セルトリウスがペルペンナに暗殺される/ペルペンナが指揮権を引き継ぐ/ペルペンナがポンペイウスに敗れて殺される 第14章 スパルタクスとの戦争/スパルタクスが戦いで何度もローマ軍を破る/クラッススが指揮権を委ねられる/クラッススがスパルタクスを破って殺す/戦争の終結/ポンペイウスとクラッススの競合と和解 |